本の出店
    「縞模様のパジャマの少年」岩波書店  ジョン・ボイン作 千葉茂樹訳 

 何の予備知識もなしに、縞模様のパジャマの少年と聞いたら何を想像するだろう。私はシマウマのパジャマを着た少年かと思った。これが何ともトンチンカンな想像だった。
 時はナチス政権下のポーランド。舞台はユダヤ人強制収容所。主人公は軍人の父を持つ九才の少年ブルーノと彼の親友ショムエル。会うのは、いつもフェンス越し。勿論命がけだ。
 父の転任で、この収容所にやってきたブルーノ。だが九才のブルーノは収容所を町だと思う。フェンスの中では縞模様のパジャマを着た大人達が疲れた様子で歩いている。父親の部下の兵隊たちは、反対に威張っている。一体何故なのだろう。探検することを思いついたブルーノが、そこで初めて友達になったのがショムエルだった。いつもフェンス越しに話すだけで、手をつないで遊ぶなんてことはできない。そんなふたりが、フェンスの外で、しかもブルーノの家で会った。ショムエルは人体模型そっくりの骸骨のような手で、グラスを磨いていた。冷蔵の中にあった肉を切って、腹ぺこのショムエルに勧めるブルーノ。もしも食べているところを冷酷な中尉に見つかったらと思うと、ショムエルが手でない。だが空腹に負けて食べてしまうショムエル。そこに中尉がやってくる。現場を見て、事態を把握した中尉は「きみはやつらと話したことがあるのか」とブルーを問いつめる。すかさず「話したことなんかないよ」と答えるブルーノ。このことがきっかけで、なぜユダヤ人が収容所に入れられているのかを考えるようになる。だがブルーノ一家がベルリンに戻る日がやってくる。最後のお別れを言いにショムエルに会いに行ったブルーノは、ショムエルと同じ縞模様のパジャマを着て、彼の父親を捜すことになった。だがいくら探しても、父親の手がかりはない。降り止まぬ雨の中で「もう、いやだよ」とショムエルに訴える。家に帰りたくなってきたブルーノ。そして、雨宿りと思って行進していた縞模様の大人達と一緒に入った部屋の金属の扉が突然閉まる。

 二人の間にあったフェンスは、たしかにブルーノの心の中にもあった。だが、交流を深める中で、現実と同じようにそのフェンスに小さな穴があいた。ちょっとだけフェンスの中を探検してみようと思った些細な少年の心には、ショムエルと運命を共にしようという思いは、最初はなかったはずだ。ショムエルと雨の中、彼の父を捜している間に、ブルーノの心は変化する。もっとも大切な親友だとショムエルに伝えるブルーノ。そして、身をもって示す瞬間がブルーノにやってくる。何か重大な決断をするとか、全てを捨てるとか、そんな大それたことではなく、そのときは突然やってきた。両親に別れを告げる暇もなく、永遠の友情を選び取ることになったブルーノ。
 今も、フェンスは形を変えてあちこちに存在する。そのフェンスの傍らを通るとき、ブルーノとショムエルの姿が蘇ってくる。                                            

                                (K.D)