本の出店

「ビッグイシューの挑戦」 佐野章二著

 夜の木場公園を散歩していると、定位置で寝ているホームレスを何人も見かける。
ホームレスといえば、家も仕事もないというのが当たり前だが、ホームレスでも仕事が出来る。しかも、自分の裁量次第でホームレスではなくなるかもという、夢のような話を佐野さんは雑誌「ビッグイシュー日本版」によって実現した。
 2003年8月、大阪の釜ヶ崎のビルの一室に集まった十数人のホームレス。だがビッグイシューの販売に手を挙げたのは、たったの四人だったいう。
 「ビッグイシュー」はイギリスで1991年はじまった。施しによるホームレス対策に疑問をもっていたゴードン・ロディックとジョン・バードの二人によって「チャリティーではなく、ビジネスを」をスローガンに10人の販売者ではじまった。それが2010年3月現在、6大陸38ヶ国で108の雑誌が発行されるまでになった。
日本でも当初、四つの理由で反対された。①若者の活字離れ、②すでに情報はタダの時代、③路上で雑誌を買う習慣がない、④好んでホームレスから買わない。トラック一台分の反対理由を佐野さんは乗り越えていく。
なかででも「販売員が守るべき八つの規範」を定めたことは、特筆すべきではないだろうか。あくまでもビジネスに徹することで、酒や薬物の影響を受けたままで販売しない、あるいは販売と同時に金品を要求しない、ほかの物販の邪魔はしない、など、ホームレスの信頼を得られる内容になっている。更に販売にあたっては、各自の自主性に任されている。
セロファンに包んで売る人、移動式の特別棚に並べる人、折り紙を一緒に渡す人、はては新年に5円玉同封の袋を付ける人も。
 2007年、ビッグイシュー寄金が設立される。応援プログラムは三つ。
①生活自立応援プログラム・②文化・スポーツ応援プログラム。③就業応援プログラム。
ホームレスに文化・スポーツをということで「ホームレスワールドカップ」というのがある。これに日本からも参加している。
人とのつながりを絶たれたホームレスの若者が「自分が得点をいれたときよりも、仲間が入れたときの方が嬉しかった」という台詞にホープ(希望)レスに希望が戻ってきたのだと思った。
 現在、数十万にいると言われる「ひきこもり」も将来はホームレスになりうると佐野さんはいう。成果主義に寄りかかってきた日本はますます住みにくい社会になっている。
ならば、どうするか?その答は、ジョン・バードの発言にヒントがあるように思う。

「何が立派な仕事で、何がかっこいい仕事か。それは一見つまらないと思われている仕事を威厳を持ってやっている人、その姿が一番かっこいいんだ」。
ビッグイシューの販売がキャリアになる時代、そんな日がいつか日本に到来することを望んでいる。

                                                                   K.D

 教会報「つながり153号」より